草風舎代表の菅野文哉さんが陶芸の道に入ったのは大学卒業後。手に職を付けたいと考えていた菅野さんは焼物を学ぶために茨城県笠間市へ。地元で知り合った方の紹介で窯元に就職。5年半の修行を経て、筑波山麓にて独立をします。7年間の制作活動を行ないながら移住先を考え始めていた頃、友人の紹介で滝沢市を訪問。半年後には滝沢市への移住を決め、現在の場所に牛舎を改築した工房を構えました。陶器制作を始め30年が経ちました。
菅野さんが創りだす陶器は、カサカサとした表面の土味が特徴。粘土の産地としても有名な滋賀県信楽産の粗めの土を使用している。「土味の陶器の中に異質な質感を取り入れたい」と語る菅野さん。赤色の蓋と黒の丸紋が美しい『漆丸紋ポット』は、陶器の土味と引き立てあう材料として漆の技法を取り入れた。「漆は光がやさしく反射するので、発する色合いが異なるんです」という言葉通り、漆を薄く何度も塗り重ねた事で、漆独特の深みがある色が美しい陶器に仕上がっている。注ぎ口の内側に付いている茶こしは、手仕事でひとつひとつ丁寧に穴が開けられているため、水きれが良い。
菅野さんが陶器をデザインする際には、装飾だけでなく"使いやすさ"も重視する。
製作された作品はどれも驚くほど軽い。マグカップは軽くて持ちやすく、カップ底の高台が広がっているため、安定し倒れにくい構造となっている。
急須やポットの取っ手は、お湯を入れても重さを感じさせないようにデザイン。注ぎ口から水漏れしにくいのも特徴だという。
モノを大切にした生活を送ってほしいという菅野さん。「日常の流れの中で、息抜きをするほんのひととき、道具に意識を向けることで生活が変わるはず。その息抜きのひとときに、愛着を持って使ってほしい」と話す。
今後は焼物と"漆"の融合を深め、新しい焼物のスタイルを追求していくと語る菅野さん。急須やポットを中心により独創的な作品を創りだしていきます。